秘蔵音源:吟士権者S48からS55


富士山夜景

歴代吟士権者:吟士権者S48からS55

 

S48指導者級 愛連 忽那哲夫

楠公慕前作(吉田松陰)


群雄割拠の時代にして、節以上に声の良さが際立つ一吟。
「鳴呼忠臣 楠氏の墓」の「鳴呼」の感嘆、「人間の生死 何ぞ言うに足らんや」の「生死」の8は、特に聞き惚れる一節です。

 

S49指導者級 愛連 中尾克久

桜花詩(作者不明)

 

小気味良い節回しが何とも軽快な技巧の一吟。
(「声の忽那、節の中尾」と好みが分かれる中、昭和40年代後半のハイレベルな争いでした。)
「滋賀の浦は荒れて 暖雪翻り」の中変形の大山、最終行「路更にはるかなり」のゆり上げての盛り上げは興奮します。

 

S51 府連 鈴木治

予選:爾霊山(乃木希典)

 

述懐(雲井龍雄)

 

声の勢いだけでなく、容易に真似のできない節回しは、奥薗緑水の同様で吟界では至宝の吟者です。鈴木永山の「爾霊山」が偉大過ぎて、あえて同じ吟題を選ぼうとは思えません。

 

S51 愛連 寺田千鶴

近江八景(大江敬香)

 

紫州流明吟回の女流を代表する吟士権者で「THE明吟」のルーツを思わせるお手本のような一吟。
いとも簡単に聞こえるほどに正確に的確に一定にして入るゆりは秀逸です。

 

S51指導者級 府連 増田忠和

本能寺(賴 山陽)

 

哲泉流の「本能寺」は、この吟が現世においても雛形的なレジェンドです。

 

S52 府連・愛連 赤坂綾子(現 村上綾子)

予選:獄中の作(武市半平太)

 

決勝:近江八景(大江敬香)

 

鈴が鳴るような細かいゆりに、低音が響くのが魅力の一吟です。

 

S52 愛連2位 鈴木治

逸題(西郷南洲)

 

同年吟士権の赤坂綾子に必ずしも劣る吟ではなく、聞きようによっては、こちらを吟士権とした審査員も多数いたはずです。

このレベル、このクラスになると優劣は時の運、審査員の好みであったと思わざるを得ません。

 

S52指導者級  府連・愛連 田畑一子

近江八景(大江敬香)

 

節、流れ共に優れた技術を持ち、若くして吟界のタイトルを総なめにした天才で、今なお関西吟詠界を牽引し続けている吟。

「近江八景」は十八番で、「近江八景」=田畑水姫と連想させるほどに印象が強いです。

 

S53府連 山口英二

九月十五夜(菅原道真)

 

当時の課題詩「逸題」「述懐」「本能寺」に「小楠公」等々の攻めの強吟に対して、「秋思詩」「山中の月」「近江八景」に「九月十五夜」等、味のある叙情詩。決勝吟で聞かせる叙情詩を選ぶ吟者は数多いたものの、その中でも、この一吟は「声」「流れ」共に合った秀逸さです。

 

S53 愛連 前重興亮

予選:家兄に寄せて志を言う(広瀬武夫)

 

秋思詩(菅原道真)

 

若さ溢れる吟声、無伴奏時代に一声からシャープし続け、最後まで吟じ切ったのは、まさに気迫と根性が伝わる一吟。

 

S53指導者級 愛連 増田忠和

春望(杜甫)

 

「金州城下の作」「本能寺」「春望」等、十八番の吟題の詩意を存分に表現するに長けた一吟です。特に「春望」の7~8行目「白頭掻けば更に短く、渾て簪に勝えざらんと欲す」、最後2つの大山は吟士権を決定づけました。

 

S54 府連 西村淳子

山中の月(眞山民)

 

淡々としたリズムの中に、言葉運びが魅力的に活きています。安定感ある太い声、まろやかな「あ」の母音、心地よく耳に響く個性あふれる一吟です。

 

S54愛連 井口勤

大楠公(河野天籟)

 

例えるならば紳士的で品のある一吟。勢いで押す関吟調の主流とは異なり、丁寧な節、言葉運びは同流儀にしては希。

 

S54指導者級 府連 鈴木治

予選:大楠公(河野天籟)

 

決勝:逸題(西郷南洲)

 

ここまで安定感を保ち迫力を最後まで維持する吟は他にありません。この当時の競争時代に声・節の質はさることながら、攻めに徹した一吟は聞く者を圧倒します。

 

S54指導者級 愛連 松葉勲

本能寺(賴 山陽)

 

これぞ「本能寺」のイメージに相応しい熱吟です。後にご子息も同様「本能寺」で一部、二部愛連吟士権を獲得され、一族脈々と受け継がれる節回し、迫力は世襲でのみ継承されます。

 

S55 府連・愛連 大串克喜

予選:常盤雪行(梁川星巌)

 

決勝:秋思詩(菅原道真)

 

関心流の個性ある節調が光る、迫力がありながらも、声の起伏と抑揚で繊細な部分表現がされています。男性吟者の「常盤雪行」にも味わいがあり、情感溢れる世界観あることを再認識させられた一吟。